上高井教育会館の講堂には上條信山が揮毫した「不易流行」の額が掲げられている。
「不易」とはいつまでも変わらないこと。即ちどんなに世の中が変化し状況が変わっても絶対に変わらないもの、変えてはいけないものということで、「不変の真理」を意味し。逆に、「流行」ははやること。はやるもの。特に、その時代の好みに合って一時的に世の中に広く行われるもの。社会や状況の変化に従ってどんどん変わっていくもの。あるいは変えていかなければならないもののことである。
「不易流行」は松尾芭蕉が「奥の細道」の旅で体得した概念と言われる。不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず。即ち不変の真理を知らなければ基礎が確立せず、変化を知らなければ新たな進展がない。しかもその本は一つなり。即ち両者の根本は一つであるというものである。
「不易流行」は俳諧に対して説かれた概念であるが、学問や文化や人間形成にもそのまま当てはめることができる。森羅万象は時々刻々変化即ち「流行」するから「知」は絶えず更新されていく。先人達はその中から「不易」即ち「不変の真理」を抽出してきた。その「不易」を基礎として、刻々と「流行」する森羅万象を捉えることにより新たな「知」が獲得され、更にその中から「不易」が抽出されていく。「不易」は「流行」の中にあり「流行」が「不易」を生み出す、この「不易流行」システムによって学問や文化が発展してきた。一人一人の人間も「不易」と「流行」の狭間で成長していく。
いうまでもなく、学校の学習内容も指導方法も「不易流行」の営みである。社会は変化し、子どもも親も変化している。教員の職責を遂行するためには、絶えず研修研鑽に努め、「不易」と「流行」を両眼でにらみ、あるいは一体化させる努力が必要である。